INTERVIEWS

Jeroen Bisscheroux インタビュー

2013 POOL -loss of colour 色彩の喪失-
@名村造船所跡地 クリエイティブセンター大阪、大阪駅グランフロント北館 ナレッジキャピタル


はじめにご自身の紹介をお願いします。

現在、アムステルダムでアーティスト活動しているヨルン=ビシュルーです。私は主にパブリックアートの作品を作り、公共の空間に設置し、その空間にいる人々の間に交流をもたらすものです。

作業しているアトリエはNDSMにあり、そこで活動することによって様々な利点があります。例えば、あるアイディアがあって、それを三次元の作品に実現するとなると、同じNDSMにいるアーティストや職人などに声をかけて手伝って貰います。一人で制作するには重すぎたり、複雑すぎたりすると他人の手を借りる必要があります。NDSMにスタジオを持つことによって、企画・制作・生産・運搬の要素がすべて素早いスピードと強いつながりで結ばれています。

私はNDSMで20年間活動していますが、人の行き来も見ていますし、時間と共にどのように変化してきたかも体験しています。今となっては大きなアートシティになり、大きなアートコミュニティがあります。非常に活気のある場所で、アムステルダムで唯一大規模なアートイベントを開催できる場所です。野外にも広々とした空間があり、特別なところです。今までのNDSMの経緯から見ても、ここで活動し続けられることは光栄です。


今回、AIRで来日されてまず仙台へ視察に行かれたと伺いました。それについてお話しください。

仙台へ行く計画は、日本で滞在制作をするのだから、日本の体験に特化したものをつくろうということになりました。したがって東日本大震災の被災地に行きました。二日間の滞在で両日とも英語通訳ガイド「GOZAIN」と「語り部タクシー」に通訳・案内していただいて被災地を回りました。 オランダではこの震災のことをほとんど知られていませんし、私自身もあまり知りませんでした。2011年3月11日にはもちろんニュースは流れましたが、数日後、ニュースの焦点はすぐ違うものに移りました。

実際現地に足を運ぶと、あまりにも悲惨な状況に驚きました。崩壊した家の土台が見えるなど、被害そのものがあらわになっていました。ある学校では、一部が崩れ落ちていてそれを目にした瞬間、地獄のようなものを経験したのだなと分かりました。私たちは合計10箇所くらい学校、工場、介護施設などを回りました。 驚いたのは、ほとんどの場所は被害があった当時から何も手を加えずそのまま放置されていて、まるで時が止まったような感覚に襲われました。衝撃的な旅でしたが、インスピレーションを得るための目的で行ったので、それは十分に果たせたと思います。


仙台から戻ってこられて、住之江区民、そして大阪府立港南造形高校・住之江特別支援学校の生徒を対象としたワークショップを開催されましたが、いかがでしたか?

ワークショップは大変興味深いもので、皆にとって実りのあるものだったと思います。このワークショップでは「鳥」と「楽器」のモチーフを一つのデザインに組み合わせ、木製のステンシルを作り、そのステンシルを使って高圧洗浄機で汚れた壁に噴射し、デザインを残すというものです。地域の皆様を対象にした回では、とても幼い子供たちが積極的に参加したことに驚きました。高齢の女性が飛び入り参加し、鳥をデザインしたのもの印象的でした。デザイン完成後には、団体で壁がある現場に行き、壁に高圧洗浄機を使って「タグ」(※グラフィティのように「落書き」をするもの)をしました。

今回、「鳥」と「楽器」のモチーフを使った理由は単純です。鳥はどこにでも生息しています。彼らは境界と言う概念がなく、自由です。殆どの人は鳥に対して肯定的なイメージを持っています。楽器も似たような特徴があり、音楽を聴くと楽しい気持ちになるなど、肯定的なイメージがあります。個人の創造性によって、二つのモチーフが組み合わし、その結果を見るのはよい作業だと思います。高圧洗浄機を使用して行う「タグ」についてですが、引き算式に壁から何かを取ることによってアートを作るという「ひねり」に興味を持ちました。よく壁などに見かけるグラフィティもいいと思いますが、壁に塗料など材料を重ねることによって作品が成立します。今回、重ねるのではなく、汚れなどを取ることによって同じく作品を作りました。


では、「POOL -loss of color-」の作品についてお話しください。

本作品の目的は仙台と福島での経験を融合したものです。津波、そして原子炉の漏水の影響という二つの人災についてです。
プールというモチーフを今回使っているのですが、プール自体は娯楽や遊びのイメージがあると思います。同時に、福島の原発事故での漏水のように、死を彷彿させるものでもあります。水を貯めるプールの相反する二つ意味が興味深く、合わせてカーペットのデザインに入れました。

仙台に滞在中、津波が起こった前後を空中から撮影した写真集に出会いました。前後の写真は隣り合わせに配置されていて、片方は色鮮やかな風景が見えますが、もう片方は灰色で色あせていて何もありません。人が移動したり亡くなったりすることにより色もなくなったのです。日本にとって福島で起こっていることは大きな問題だと思いますが、世界中にとっても大きな問題なのです。この作品はそういう意味では現状に対しての警告でもあります。鑑賞者はまず、プールという娯楽的なモチーフで惹きつけられますが、作品と時間を共に過ごすと共に、プールの深さや底にある水、壁面の色を見ると恐怖を味わいます。


今回の展示にて、カーペットは「客人を招待する場所を示す働き」をするということが記載されていましたが、詳しくお聞かせください。

それがカーペットなのです。人々が集まる場所です。時には鑑賞物であり、色彩が魅力的であり、殆どの場合、人は居心地の良さを想像します。しかし本作品では、描かれたモチーフは居心地が悪く怖いものです。鑑賞者がカーペットの中心に立ち、目を細めて周りをみたら、まるで三次元のプールの中にいるように感じます。これを体験していただけたら私にとって本作品は成功です。


カーペットの中心部には水がたまっているのですが、色が鮮やかで驚きました。中心部にたどり着くまで、地味で汚いプールの壁面を横断しなければならないのですが、その体験についてはどう考えていますか?

鮮やかさはその液体の毒性や危険性を表しています。オランダではよく魚が核の性質を保有する水に泳ぐと、後で発光するという都市伝説のようなものがあります。水をあえて鮮やかにしたのはそのような背景もあり、毒づいた印象を与えたかったのです。また危険信号みたいな要素も入れたく、このような色にしました。


最後に、日本滞在の印象をお聞かせください。

今回、私ははじめて来日し、時間的にも距離的にもオランダからこんなに離れたのは初体験です。ひとつひとつ何が私に特別だったかと細かく説明することも出来ますが、最も重要なのはそれではなく、あらゆる場面で違いを感じたところだと思います。食べ物、飲み物、人間関係、歩き方、服装、都市形成。私は人生で寒いと思ったことはないのですが、ここでは本当に寒いと感じました(笑)。日本では何もかもが異なる方法で行われているのですが、それらは私に新たな発見をもたらすと同時に、日本に愛着がわく要因となりました。


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