INTERVIEWS

Jeroen Erosie インタビュー

2012 Pattern Formation
@名村造船跡地 クリエイティブセンター大阪


今回、ウォールペインティング・プロジェクトのアーティスト・イン・レジデンス企画として日本に滞在されていますが、プロジェクトについての感想を聞かせてください

このプロジェクトでは、二つのことを同時に進行させています。約40名の参加者と壁画を制作するワークショップと、自分自身の作品制作をワークショップのプロセスに取り入れながら制作することです。自分のストーリー、そして参加者のストーリーが共有された作品を作りたいと考えています。

大きな規模での壁画制作には時間がかかるのですが、日本での滞在時間に限りがあるということが今回の最大の課題です。2週間の土日を使ってワークショップを行い、合間の時間で作品の手直しと自身による制作を行っています。様々な年齢やアート経験の有無、限られたワークショップ時間と、そして異なる国での制作。あらゆる壁がありますが、やりがいを感じ、楽しみながら進めています。


過去にコラボレーション作品やワークショップを用いた作品制作をすることはありましたか

ワークショップは何度も開催したことがありますが、今回のような形式は初めてです。

ワークショップは開催しても、自分の作品に参加者の手が直接関わるものは滅多にないです。しかし他の媒体と比べたら、グラフィティや壁を使って制作する作品は、他人との共同作業を要する場合が多いです。例えば、油絵で絵描きがカンヴァスに描いたあと赤の他人がその作品に手を加えることはあまりないと思います。

他のアーティストとのコラボレーション作品では大体2、3人ぐらいと作業することが多いです。しかし今回のウォールペインティングは大人数で、絵筆を持ったことすらない人もいます。言語の壁もあるので、いつも経験しているワークショップの状況と非常に異なるし、この作品が僕たちの作品になることがとても興味深いです。


滞在中、特に目についた日本独特の文化や目新しいものはありましたか

日本の滞在で一番困るのは、あまりにも見るものが多いことです。そして日本語が読めないので、文字を含め殆どの視覚的な情報はただの形やデザインに見えてしまいます。例えば、日本人はそんなに注目していないかもしれないけれど、歩道に見つける模様とか着物の布地の模様に似ている気がします。

あとは実用的な建築が面白いです。例えば、とても狭い空間に3階建ての家が建ててあって、どこに階段や台所、寝室や浴室が組み込んであるのか、その周りを歩きながら想像するのが楽しいです。こういう建築を個人的に「飛行機建築」って呼んでいます(笑)全てが小さな空間に圧縮されている気がするからです。

日本に来て、あらゆる場所でキャラクターやマスコットが登場しているのもとても興味深いと思いました。キャラクターは広告や会社のロゴなどに使われているのですが、僕がオランダで見る視覚的な意味とは異なります。なぜなら、オランダでキャラクターを使ったら基本的に子供対象のものと見なされるからです。
しかし日本文化ではそうではなく、対象の範囲が幅広く、大人も含まれていて好きです。これらの違いでどちらが正しいのか悪いのか、という判断は下せません。二つの文化を一つの基準で測ったり比較したりするのは、難しく複雑なので、多角的な見方が必要です。

この滞在に関してはとても有意義に過ごせていると思います。滞在中、いつも自分は「視覚的な観光客」だと思っています。新しい情報をスキャンし、言語を理解できないことを言い訳に、自由にあらゆるものを吸収できると思うのです。これは例えば僕がヨーロッパに滞在する場合と異なると思います。たとえその国の言葉が喋れなくても、同じヨーロッパ圏内ですし、言葉も同じアルファベットを使うので、何が似ているのか異なるのか見分けることができます。
しかし日本ではあまりにも異なる要素が多いので、僕にとって非常に特別な経験だと思います。短期間でこんなに沢山の情報を得ることは滅多に無いですし。


滞在制作の集大成としてHOT DOCKS 2というイベントが開催されますが、オランダからErris(以下、エリス)とPhet Onefive(以下、ピーター)が来ます。彼らはどのような人たちですか?

今回、彼らが来日するのはとても良いことです。僕たちのグラフィティやウォールペインティングに対するアプローチはそれぞれ手法が異なるので、観客に表現の幅広さを見せる良いきっかけになると思います。

ピーターは、オランダにグラフィティが紹介された当初から活動を始めている一人です。彼の作品は常に成長している様子が明快にわかるので、そこが面白いです。ピーターは過去作品のビジュアル的な要素を振り返り、好きな要素や嫌いな要素を選び抜き、新しい作品に反映させるという制作方法を用いています。

エリスは「Graphic Surgery(グラフィック・サージャリー)」(以下GS)というグラフィティ・コレクティブに所属しています。GSは、2名の男性によって結成されたユニットで、写真や、グラフィック・デザインの要素を取り入れたスタイルで制作し、線や平面上の形を使用しています。また特徴的なのは、彼らは制作中にまっすぐな線を描くためにテープを使用します。グラフィティ界ではタブーとされてきたことで、本来ならばテープを使わず直線を描くのが重要なのですが、それを堂々と破っています(笑)

ピーターとエリスの作品は、比較的見る側がグラフィティの知識が無くても、価値を見いだせるものを作っていると思います。

ヨーロッパのグラフィティ文化はアメリカから来ました。ヨーロッパは第二次世界大戦以降あらゆる文化面でアメリカからの影響を受けていますが、日本でも同じようなことが起こっているのはないでしょうか。その受け入れた文化の取り入れ方や消化方法は違うのかもしれません。今回、Koutaro Ooyama a.k.a. Mon(日本のグラフティアーティスト)とHOT DOCKS2に出演することによって、日本のグラフィティを少しでも理解できればと思います。


イラストレーションやグラフィティに関わるようになったきっかけを教えてください

10代の頃に接したユースカルチャーの影響が大きかったと思います。
1980年代のオランダでは、アメリカから伝わってきた音楽やスケートボード、グラフィティの映像をテレビで見ることが多かったです。13歳の時に、このような影響から絵を描き始めるようになりました。
絵を描き続けた結果芸術系の大学に進み、イラストを学びました。大学でイラストを学びながら、学校の世界とは別に、グラフィティの世界にも入っていきました。グラフィティ界はストリートカルチャーの基準に基づき、学校の世界とは全く異なるルールで回っていて、たまに法律に触れるようなこともあります。
大学卒業後はプロのイラストレータ・グラフィックデザイナーとして活動しましたが、常にもっと柔軟な働き方をしたいと思っていました。イラストレータとして一週間働くと、夜や週末はやはりグラフィティをしたくなり、次第に両方の世界を融合させるようになっていきましたが、長い間その二つを一緒に考えることはありませんでした。

このような形で、イラストとグラフィティのキャリアが同時に発展していきました。その結果、今ではカンヴァスの上で作品制作をすることもあるし、レコードカバーのデザインを手掛けることもあるし、イラストレーション作品も発表しています。発展の過程は一応落ち着いたように見えるかもしれませんが、まだ新しい方法で制作したいと思っていますし、探求心は失っていません。


ご自身の制作方法のルーツは何ですか

アートは、制作者の内側にあるものを露わにする性質があると思います。自分の場合は、カオスなところがある反面、整頓されたものを求める性質があります。ある意味正反対ですね(笑)昔は必ず一つのものに集中しなければいけないと思っていましたが、今は色んな場所や分野から異なる要素を収集して作業をする方が、一番自然になっています。またこのような経験が、自分には合っていると感じています。
今、過去に自分が何をしてきたかはわかっているけど、将来は何をしているのか検討もつきません。これは僕にとって可能性を意味するもので、そんな今の状況にとても満足しています。

プロジェクト詳細ページ
アーティストプロフィールページ